研究内容

漢方薬には少なくとも1500年の歴史があり,徳川家康も八味地黄丸を愛用していたようです。 現在,漢方薬148処方,漢方生薬200種類が保険適用となっています。 そして,医師の9割以上に漢方薬の処方経験があります。 これだけ普及している漢方薬ですが,新薬で行われる臨床評価試験は経ておらず,古典や経験に基づき使用されています。 そのため,今,漢方薬の効果とメカニズムに関して,臨床研究や基礎研究が求められています。

漢方医学センター研究項目
■ 臨床研究

(1)個別化治療の特性を生かした漢方の新規臨床エビデンスの創出
漢方は患者主観を重んじる医学,かつ個別化の医療です。 平成20年度から厚生労働科学研究費によって個々のデータを集積し, それをデータマイニングの手法により漢方の新規エビデンスの創出を行っております。 本研究は東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター,東京大学工学部との共同研究で, わが国における漢方の主要施設と連携しながら推進しております。

イラスト

タッチパネル

イラスト

冷えのある患者のパターンを可視化

■ 漢方の特性を利用したエビデンス創出と適正使用支援システムの構築
■ 自動問診システムと診療録情報を用いた後ろ向き観察研究による
漢方診断予測システムの構築
【研究期間】 平成20年5月から平成32年12月まで(予定)
【研究責任者】 三村將
【研究目的】 漢方の特性である
1)個別化治療
2)患者の主観的愁訴を重視した医療
3)全人医療
を生かした従来にない臨床エビデンスの創出と, 漢方薬の適正使用を促進する診療支援システムの構築を目的としています。
【研究対象】 研究期間に,該当施設の漢方外来を初診で受診した患者
【概要】 複数の大学と診療施設の共同研究として実施しています。
該当施設を受診した患者さんの診療情報(年齢,性別,初診時の症状と採血結果,その後の経過,漢方的診察結果, 舌画像など)を,個人が特定できない匿名の情報として慶應義塾大学医学部漢方医学センターに回収し, 東京大学の協力の下で統計解析を行い後方視的に検討します。
【関連論文】 [11] Maeda-Minami A, Yoshino T, Katayama K, Horiba Y, Hikiami H, Shimada Y, Namiki T, Tahara E, Minamizawa K, Muramatsu S, et al., Prediction of deficiency-excess pattern in Japanese Kampo medicine: Multi-centre data collection. Complement Ther Med. 2019 Aug; 45:228-233. Epub 2019 Jul 5.

[10] Yoshino T, Katayama K, Yamaguchi R, Imoto S, Miyano S, Mima H, Watanabe K., Classification of patients with cold sensation by a review of systems database: A single-centre observational study. Complement Ther Med. 2019 Aug;45:7-13. doi: 10.1016/j.ctim.2019.05.011. Epub 2019 May 11.

[9] Horiba Y, Yoshino T, and Watanabe K, Effectiveness of Japanese Kampo treatment in dysmenorrhea: Single‐center observational study. Traditional & Kampo Medicine 2018, 5: 51-55.

[8] Iwasaki K, Namiki T, Takamura M, Yoshino T, Takayama S and Sakatani K. "Annual meeting of the Japan Traditional Chinese Medicine Association: Quantifying and objectifying traditional Chinese medicine." Journal of Traditional Chinese Medical Sciences 2017, 4(1): 10-13.

[7] Hamaguchi T, Yoshino T, Horiba Y, Watanabe K. Goshajinkigan for Low Back Pain: An Observational Study. The Journal of Alternative and Complementary Medicine. 2017, 23(3): 208-213.

[6] Yoshino T, Katayama K, Horiba Y, Munakata K, Yamaguchi R, Imoto S, Miyano S, Mima H, Watanabe K: Predicting Japanese Kampo Formulas by Analyzing Database of Medical Records: A Preliminary Observational Study. BMC Medical Informatics and Decision Making 2016 16:118.

[5] Yoshino T, Nakamura H, Sano M, Horiba Y, Nakamura T, K. W: Elevated Direct Bilirubin - Possible Predictors for Pseudoaldosteronism: A Case-Control Study. Traditional and Kampo Medicine 2016, 3(2):174-176.

[4] Yoshino T, Katayama K, Horiba Y, Munakata K, Yamaguchi R, Imoto S, Miyano S, Mima H, Watanabe K, and Mimura M. The Difference between the Two Representative Kampo Formulas for Treating Dysmenorrhea: An Observational Study. Evidence-based complementary and alternative medicine. 2016; 2016: 3159617.

[3] Katayama K, Yamaguchi R, Imoto S, Watanabe K, and Miyano S. Analysis of Questionnaire for Traditional Medicine and Development of Decision Support System. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine. 2014; 2014: 974139

[2] Tokunaga H, Munakata K, Katayama K, Yamaguchi R, Imoto S, Miyano S, and Watanabe K. Clinical Data Mining Related to the Japanese Kampo Concept “Hie” (Oversensitivity to Coldness) in Men and Pre- and Postmenopausal Women. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine. 2014; 2014: 832824

[1] Yoshino T, Katayama K, Munakata K, Horiba Y, Yamaguchi R, Imoto S, Miyano S, and WatanabeK. Statistical Analysis of Hie (cold sensation) and Hiesho (cold disorder) in Kampo Clinic. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine. 2013; 2013: 398458
【問い合わせ先】 漢方医学センター 直通電話03-5366-3824

【慶應義塾義塾大学医学部
倫理審査に基づく掲示
20100144号】

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■ 漢方自動問診システムに搭載するための
皮膚掻痒感に関連する評価票の
応答性の調査を目的とした前向き観察研究
【研究期間】 2019年6月から2021年3月まで(予定)
【研究責任者】 三村將
【研究目的】 現在、医師の約9割が臨床の場で漢方薬を使用していますが、その実情は各専門診療科において西洋薬の代用としてわずかに使用されているにすぎません。この理由のひとつとして漢方薬に関する質の高い臨床エビデンス(科学的根拠)が不足していることが挙げられます。
わたしたちは、これまで自動問診システムを開発し、患者情報の経時的収集を行い、これに医師側の診療情報を合わせた新規情報プラットフォーム「自動問診システム」を開発し、漢方薬の効果予測をすることに成功しました。一方で,より適切な治療を行うには、世界的に用いられている評価票による評価も重要です。
アトピー性皮膚炎や湿疹による皮膚のかゆみは様々な評価票が臨床研究に用いられており,選択肢が多い一方で,どの評価票が漢方治療の評価に適切であるか不明です。
そこで,今回皮膚のかゆみに特異的な評価票をいくつか用いることにより,漢方外来での治療による症状の経時的な推移を評価し,比較することにしました。本研究により,皮膚のかゆみについて適切に評価できる評価票を自動問診システムに搭載することで,治療による患者さんの状態の推移を高い精度で評価することができるようになります。
また,腸管透過性亢進により,健康な腸では血中に移行することのなかった異物が移行し,アトピー性皮膚炎,皮膚のかゆみ,不安,ストレス等種々の症状に影響を及ぼすことが報告されています.
そこで,探索的にかゆみ,アレルギーおよび腸管壁のバリア機能の指標*についても調査します。
これらのことにより,難渋する皮膚掻痒感治療の一端を明らかにすることができれば,今後の皮膚掻痒感治療に貢献することができます。
*かゆみの指標としてIL-31,アレルギーの指標としてTARK,腸管壁のバリア機能の指標として、ゾヌリンとジアミンオキシダーゼ(DAO)について測定します。
【研究対象】 この研究には、当院漢方医学センターに来院し、自動問診システムと漢方医学的診断を受けた20歳以上の方で皮膚のかゆみのある方が参加できます。なお、過去4週間に漢方薬を服用した場合、漢方薬を服用後にアレルギーを発症した経験のある場合、過去4週間以内に内服もしくは静注ステロイド製剤を使用していた場合或いは担当医師の判断で参加できないことがあります。
【概要】 研究期間に受診した際には、必ず診察前にモバイル機器又は問診エントリー機器から「自動問診システム」へ情報を入力していただくことになります。問診項目は約80項目です。さらに初診時に皮膚や舌をデジタルカメラで撮影します。また、日常診療の範囲で血液検査や尿検査を行います。
 今回の研究では、上記日常診療での診断項目に加えて、皮膚のかゆみに特異的な4つの評価票を使用します。合計約35項目の質問に答えて頂きます。また、上記血液検体の残りを利用して、腸管透過性亢進の指標を測定します。
この研究では、今回の治療開始から12週後までの毎回の来院の際に記録された自動問診、皮膚のかゆみに特異的な4つの評価票のデータを使用します。加えて、日常診療で治療開始時と12週後に行われた血液検査、尿検査と腸管透過性亢進の指標のデータを使用します。
これらのデータは、診療時に利用しますので、診察にも役立ちます。
【問い合わせ先】 漢方医学センター 直通電話03-5366-3824

【慶應義塾義塾大学医学部
倫理審査に基づく掲示
20180366号】

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(2)生薬甘草の副作用機序解明及び予防のための研究
多く漢方薬に含まれる甘草という生薬をより安全に用いるための臨床研究を行っています。
■ 甘草の副作用、偽アルドステロン症発症予防のためのバイオマーカーの開発
(Development of biomarkers to prevent pseudoaldosteronism,
one of the most frequent adverse effects of Kampo medicines
containing Glycyrrhiza)
【研究期間】 平成29年4月から3年間

【研究責任者】 三村將
【実務責任者】 三村將
【研究目的】 甘草含有漢方薬による偽アルドステロン症とよばれる副作用の発症には個体差があり、その予測方法は未だに明らかになっていません。そこで、副作用発症をあらかじめ予見するためのバイオマーカーとして、血中または尿中のグリチルリチン代謝物の濃度、血中直接ビリルビンおよびアルブミン濃度が使用できる可能性を検討、開発することがこの研究の目的です。
【研究対象】 当科外来診療において甘草による副作用を発症した患者。
【概要】 偽アルドステロン症の検査のため採取された血液および尿の余剰分を同意の上で提供していただき、年齢・性別と通常血液検査によって得られた血清カリウム値などを参考データとし、名古屋市立大学において血液および尿中のグリチルリチン酸代謝物を測定します。 この研究目的,研究方法は本大学医学部の倫理委員会で十分に審査され,承認されたものです。
承認番号20160314
【関連論文】 [4] Komatsu A, Yoshino T, Suzuki T, Nakamura T, Kanai T, Watanabe K. Risk factors associated with pseudoaldosteronism in patients with chronic hepatitis: A retrospective cohort study, Basic Clin Pharmacol Toxicol. (in press) doi: 10.1111/bcpt.13178.

[3] Yoshino T. Re: Liquorice-induced hypokalaemia in patients treated with Yokukansan preparations: identification of the risk factors in a retrospective cohort study. BMJ open 2018; eLetter.

[2] Yoshino T, Nakamura H, Sano M, Horiba Y, Nakamura T, Watanabe K. Elevated Direct Bilirubin - Possible Predictors for Pseudoaldosteronism: A Case-Control Study. Traditional and Kampo Medicine 2016; 3(2):174-176.

[1] Yoshino T, Yanagawa T, Watanabe K. Risk factors for pseudoaldosteronism with rhabdomyolysis caused by consumption of drugs containing licorice and differences between incidence of these conditions in Japan and other countries: case report and literature review. J Altern Complement Med 2014;20(6):516-20.
【問い合わせ先】 漢方医学センター 直通電話03-5366-3824
【慶應義塾義塾大学医学部
倫理審査に基づく掲示
20160314号】

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■ 基礎研究

(1)神経変性疾患に伴う「意欲低下」に対する漢方治療の探索

■ JSPS科研費若手研究 19K16959
脳卒中後意欲低下マウスモデルの作成と意欲低下に対する漢方薬治療の探索
【研究期間】 2019年4月 - 2022年3月

【研究代表者】 濱口卓也
【研究目的(概要)】 脳卒中後のアパシー(意欲低下)は日常生活動作を低下させ,患者を要介護状態に陥らせる重要な病態ですが,未だ確立された治療法はありません。本研究ではマウス実験において,意欲低下を改善させる可能性のある漢方薬を探索します。そのために,脳卒中後意欲低下マウスモデルを作成して漢方薬介入を行い,意欲低下への治療効果を評価します。
【関連論文】 [3] Tanaka KF, Hamaguchi T. The translational approach to apathy-like behavior in mice: from the practical point of view. Psychiatry Clin Neurosci. 2019

[2] Hamaguchi T, Tsutsui-Kimura I, Mimura M, Saito T, Saido TC, Tanaka KF. AppNL-G-F/NL-G-F mice overall do not show impaired motivation, but cored amyloid plaques in the striatum are inversely correlated with motivation. Neurochem Int. 2019

[1] Hamaguchi T, Tsutsui-Kimura I, Tanaka KF, Mimura M. Yokukansankachimpihange Increased Body Weight But Not Food-Incentive Motivation in Wild Type Mice. Nagoya J Med Sci. 2017; 79: 351–362.
【問い合わせ先】 漢方医学センター 直通電話03-5366-3824




■ 研究での受賞



2004年度
自主学習賞
村田 健


2004年度
自主学習賞
大堀 邦明


2004年、2005年度
和漢医薬学会奨励賞
宗形 佳織


2005年度
自主学習賞
吉野 鉄大


2005年度
和漢医薬学会奨励賞
加藤 美帆


2006年度
和漢医薬学会奨励賞
高島 清江


2006年度
自主学習賞
山本 恒久


2007年度
自主学習賞
滝沢 翼


第38回
「漢方研究」イスクラ奨励賞
吉野 鉄大


2013年度
博慈会老人病研究所
先端奨励論文賞
吉野 鉄大


2014年IRCIMH
Trainee Poster Award
吉野 鉄大


2015年度
自主学習賞
濱田 江里奈


第33回和漢医薬学会
優秀発表賞
有田 龍太郎


2016年度
自主学習賞
中島 紗樹

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