漢方のすすめ
漢方医学では、鼻や皮膚の病気であっても、病気になっている部分だけを診るということはなく、体質や個人差を重要視して、身体全体を総合的に診て診断(証をとるといいます)が行われます。医師は患者さんの様子を観察し、質問したりしながら、その人の抵抗力・体力等も診て「虚」「実」「寒」「熱」等の漢方医学的な診断を行い証を決めて行きます。
証が決まると使用される方剤が決まり治療が行われます。その際用いられるのが漢方製剤です。漢方製剤は天然の生薬を使用しています。一つの方剤は数種類の生薬で構成されているので、多くの成分を含んでいます。そのため様々な効果が期待でき、ひとつの方剤で色々な病状に対応できるケースが多いという利点があります。
漢方医学は2000年以上の長い歴史と豊富な経験に裏付けされた治療方法で、現在では、西洋医学で対応しきれない分野を漢方医学が補いながら、各医師が上手に治療方法を使い分けるようになってきています。
診療の多い疾患
- 胃腸障害(腹痛、下痢、便秘)、慢性肝炎
- 高齢者の老化に伴う種々の症状(前立腺肥大、しびれ、膝痛など)
- アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、喘息、花粉症、蕁麻疹など)
- 高血圧、糖尿病など生活習慣病
- 不妊症、習慣性流産などの産科疾患
- 風邪をひきやすい、おなかを痛がるなどの虚弱児童
- 月経不順、月経痛、冷え症、更年期障害などの婦人科疾患
- 癌や膠原病などに伴う様々な体の不調や体力低下
- 心身症、自律神経障害、神経症など
- 新型コロナウイルス感染症の後遺症
「治すのは患者さんの体」
慶應義塾大学病院漢方医学センター診療部には、乳児から高齢者まで老若男女を問わず受診されています。患者としては上記に挙げたような様々な疾患で受診されています。
よくこの病気は漢方がいいのでしょうか? 現代薬がいいのでしょうか? という質問を受けます。どんな病気に対しても漢方は適応になる、と言っても過言ではありません。大切なことは「治すべきは病気ではなくて患者さんの体である」ということです。
どちらが主となり従となるかは病状により異なりますが、現代医学と漢方医学のいい点を組み合わせることで、より良い治療効果を生むことが多いと考えて下さい。こんな病気が漢方で治るだろうか、と悩む前に是非ともご相談下さい。